私が浜御殿を訪れたのは、丁度1年程前の2005年8月11日の事でした。
長い間メインのPCが故障のままで、バックアップどころかHPのサーバーにさえ繋げない期間が続いていましたが、漸く逆ダウンロードにより何とか更新再開に漕ぎ着けた次第です。
写真ファイルも失っていたのですが、デジカメのカードに残されたままに成っていたのは幸運でした。


この広大な敷地の中に海水を引き込んだ池や、鴨場などを持つ大名庭園は、6代将軍・家宣の時代に将軍家の別邸となりました。
歴代将軍によって造園・改修工事が行われ、今の姿の庭園が完成したのは11代将軍・家斉の頃だそうです。
そうして長い年月を掛けて造られた庭園も、関東大震災や戦災によって貴重な建造物や樹木が消失してしまい大変残念に思います。

天璋院様の関係では、「天璋院篤姫」の小説中にも、家茂様・和宮様と共に、この浜御殿を訪れた時の事が描かれていますよね。
江戸風(武家風)・京風(公家風)で嫁姑の争いも、天璋院様が病気の和宮様を見舞った辺りから雪解けになり、あの七夕の夜に和宮様側からも打ち解けられて、その秋には浜御殿へ三人お揃いで清遊に来られたのでした。
この時の様子は後の時代(明治)になってから、勝海舟がこの日の事を伝えており、天璋院様ご一家としても、つかの間の幸せを味わえた時期だったのかも知れませんね。

また15代将軍・慶喜が鳥羽伏見の戦で敗れ、幕軍の軍艦「海陽」で江戸へ逃げ帰った時も、ここの将軍お上り場から上陸しています。
帰着後、慶喜は天璋院様・和宮様に状況報告と朝廷・官軍への仲立ちをお願いしていますが、どんな気持ちでの上陸だったのでしょうか。

何れにしても、吹き上げ庭園が徳川家から天皇家へ直接引き継がれ、一般の者が今尚見る事が出来ない徳川の大名庭園にあって、今は東京都の管理下にあり一般の者も見る事が出来る浜御殿は貴重な大名庭園だと思います。

Ms.2006.08.27




【大手門】

地下鉄大江戸線・築地市場駅より徒歩7分、JR・新橋駅より徒歩15分の位置にあります。
諸大名なら下屋敷に当たるものなのでしょうけれど、別邸とはいえ立派な濠に城壁、広大な敷地は桁違いで徳川将軍家の権勢を感じさせられます。
おそらく当時は、この城壁の上に立派な櫓門が構えられていたことでしょう。
この大手門の他JR・浜松町駅方面には【中の御門】があります。
【潮入の池と中島の御茶屋】

この潮入の池に浮かぶ様に佇む中島の御茶屋の情景は、浜御殿で最も有名な眺めではないでしょうか。
この潮入の池を中心に大名庭園が形成され、現存する中島の御茶屋の他にも、松の茶屋、燕の茶屋がありました。
潮入の池とは、その名の通り東京湾(当時の名称は江戸湾ですね)から海水を引き入れ、潮位に従って水門を開閉し水位を保っています。
海水ですから勿論、池の魚も鯉や鮒などの淡水魚ではなく、ボラ・セイゴ・ハゼ・ウナギなどの海水魚だそうです。
【中島の御茶屋門】

池の中央に位置する中島に存在する御茶屋へは、「お伝い橋」で渡り、かつては遠く房総半島も見渡す事が出来て、夕涼みや月見に使われたそうです。
【中島の御茶屋】

中島の御茶屋も他の茶屋と同様に、地震や戦災で失われていましたが、昭和58年に現在のものが再建され、抹茶を楽しむ事が出来ます。
残念ながら私は抹茶を戴く事はしませんでしたが、抹茶を戴きながら眺める大名庭園は、さぞや将軍様・御台様の気分に浸れる事でしょうね。
茶屋とは言え、5人家族が十分に暮らせる様な民家程の大きさがありますが、江戸城内の茶屋が茶室の趣を持つのに対して、割と砕けた作りは下屋敷的な要素が強い浜御殿なればこそでしょうか。(二の丸庭園に現存の、吹き上げ庭園より移築の諏方茶屋を参照)

【横堀と御亭山】

この横堀が水門を経て海へ通じています。
横堀に架かる橋は当時の造りそのものの様で、今にも将軍様や御台様がお付きの者を伴って静々と現れそうですよね。
御亭山は写真右方向にあり、小高い丘の様になっており、大名庭園部分を一望出来ます。

【将軍お上り場】

水門の脇に作られた船着き場で、将軍が船遊びの際に乗船・下船された場所だそうです。
「天璋院篤姫」の小説でも、史実でも、15代将軍・慶喜が戦に敗れて大阪より江戸へ逃げ戻った時も、ここから上陸して江戸城へ向かわれたそうです。
【灯台跡地】

浜御殿の最南端の海に面した場所、将軍お上り場の脇に位置する灯台跡です。
当時の灯台は八角形の木造で、その基礎柱跡だけが残っています。
【三百年の松】

6代将軍・家宣公が庭園を大改修した時に植えられた黒松です。
囲いの中央に真っ直ぐ立つのは枝の支えの添え木で、松の幹は柵の左奥(柵の外)から斜めに寝る様にして伸びています。
この松を天璋院様も眺めていらしたと思うと、やはり感慨に更けてしまう私なのでした。




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